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バロック詩の情報。

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バロック詩ってどんなんだかもっと知りたいって方は、林檎に触れよう↓

 「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」から検索した方は、「じゃんけん」をクリックしてタグをたどるのも良ろしいかと。

参考文献だけ見たい ?… 下の「ココ」へどうぞ。

フランソワ・マラヴァル

(拙訳)

噴水を見上げ、立ち上がる

この澄んだ泉は静脈から静脈へと流れてゆく、
海の底から湧き出でて。
別の水路により、愛する中心まで届く。
我が魂よ、お前はどこから来た ?
嬉しさで、陶然となる。
お前は神から来たのだ。
お前の善き海である、神に溺れるがいい。

この水のように、お前は流れる。
この水のように、お前は転がる。
しかし、偽りの道によって
だから、休む事なく走り続けている。

誰がこの水をきれいにしているのか?
誰が健康にするのか?
それは、波の起点が何も生まないと言うことだ。
苦くもなく、辛くもない。

このような正義の世界だけが、
波よりも澄んでいる。
波はすべてを流すが、それが
大地と混ざり合う事はない。

美しい水よ、あなたの源へ。
しかし、道のりの最後に
私の為に貢ぎ物を捧げて欲しい。
海の中の神に、私の信仰の捧げ物を。

お前の囁きで彼に伝えてほしい
澄んだ水を送ってくれる事、
そして苦難の中にあっても
お前が彼の波の中にいるように、
私も彼の中で迷うだろう事を。

時間の使い方

人間には、自分が持っている瞬間以外には、時間というものがない。
時間が失われると、その損失は救済されない。
あれだけ苦労して、あれだけ痛みをこらえ、あれだけ騒いで。
最後には時間もなく、実りもない自分に気づく。
一人一人が、自分を運んでくれた世紀の餌食になる。
自分を楽しませる喜びに、自分を妨げるデザインに。
そして、まるで致命的な法則があるかのように
めいめいが、自分にできないことをする。
人間は分裂しすぎていて、自分自身を所有している。
すべての時間をあなたの最高の幸せのために役立ててなさい。
すべての瞬間は、あなたにとって永遠の価値がある。
虚栄心の後に多くの良きものを失わないように。
明日を待つのではなく、その日を自分のために使おう。
あなたが持っているものは、最も幸運なものだ。
未来ではなく、現在に関心を持ちなさい。
持てるものは手放さない。
守銭奴は「明日の運勢」とは言わない。
機会を見つけては集まってくる。
彼は自分の心と体を時間に委ねる。
時間は彼の大きな財産、宝の山の底。
私たちの錯覚から、時間の忘却が漂う。
私たちの魅惑的な感覚から、誤った視点は
遠くから死と墓を見せてくれる。
100年後の人間が死ぬのは新しい事。
こうして日を失い、年で数えるようになった。
彼の過ちの100年は100日に過ぎない。
時間が時間を押して、無感覚な力で進む。
そして、生きることは常に死に近づく事。[...]



(Via https://www.bonjourpoesie.fr/lesgrandsclassiques/Poemes/fran%C3%A7ois_malaval )


【蛇足】マルセイユの盲人として、偽ディオニュシオスに基づいたマラヴァルの神秘思想はキエティスムとみなされ、論争を呼んだ。

カトリーヌ・ルヴェスク

弁護士の娘で砲兵隊長と結婚したカトリーヌはペロンヌの出身であった。彼女の著書はすべて宗教関係のもので、詩と散文の両方で執筆能力の高さを証明している。貧民から社交界の名士まで多くの読者に飽きずに読まれるように、今で言うアネクドート(滑稽な小話)を盛り込んだ点が先駆的。

(拙訳)

ミソジニー対策

「リュートやギターを弾いて妻を再現することに喜びを感じている夫にとって、妻がこの心地よい和音を無視して自分の言うことも聞かないとわかったとき、これほど腹立たしいことはありません」



(ご相談)
「おまえとどうやって仲良く暮らせばいいんだ」と夫が言いました。「おまえは頭が悪いからリュスタクル(与太郎)に繕ってもらわないといけない。おれがあるものを欲しがると、おまえは別のものを欲しがる。おまえが怒らずに、おれは一言も喋る事ができない。おまえはおれに対して、舌鋒だけでなく視線でも反応する。何でもないことで泣く。それはそれは耐え難い気性だ。一緒に暮らせなくなってしまった」って言うんです…

(カトリーヌの回答)
「貴方は、出来の悪いおつむを修理しようと思って、さらに台無しにして前よりも悪くしてしまった、無知なリュスタクルだ」と答えましょう。「小さなミミズの貴方は、仲間の中で少しの不従順も苦にしないでしょうね」と言ってやりなさい。

絶対王政支持者でもあった

「勇敢なキャプテンが軍隊に行く。どこに行くの? 私は軍隊に入るつもりだ。何のために? 戦うために。誰のために? 王の利益を支えるために。でも、なぜ? なぜなら、神がそれを望まれ、私に責任を与えてくださっているから。即ち人は複数の目的を持つことができるが、神の意志がそれらの総合であることが必要です」

(Via https://books.openedition.org/pur/53905 )


【蛇足】この他にも、聖なるものに敬意を払わずミサにペットを連れて来る人々や、神事の際にこの仔犬や仔猫たちが起こした騒動、音程を外して大声で讃美歌を歌う人々に義憤を感じ、告発している。

ピエール・ド・クロワ

(拙訳)

世界からも自分からも永遠に隔離される
これまで以上に甘い光に照らされ
霊を与える霊が特異な好意で
信仰の秘密を明かしてくれる、祝福あれ。

魂の中の神々を私は思う。
その身近な偉大さがこんなにも広がって
天は私を最高に楽しませてくれる。
私の神である私自身を精神の眼で認知させる。

私の中の燃えるような法悦は、私を犯さない。
急に五感が刺激され、気を失うこともある。
だが、無限の良きもので優しく導かれる。

親密な愛の短いストロークを描き出す
私は、その崇高な存在の純粋を感じる
内部は完全に一体化している。


(Via https://short-edition.com/fr/classique/pierre-de-croix/sequestre-pour-jamais-et-du-monde-et-de-moy )


【蛇足】この詩で始まる三部構成の詩集「神の愛の鏡」は、1608 年に1 度だけ出版されたが、印刷ミスのためか全く意味不明の言葉がそのまま入っており、注釈が求められている。

ジャンバッティスタ・マリーノ⑮獄中の手紙

(拙訳)

娑婆にて

おお、あなたは涙の香りがします、
それは涙ではなく、天使の貴重な水、
バラの水です。

絵画は寡黙な詩、その絵具は詩の言葉である。

以下、塀の中において

お気の毒な詩をひり出す気にもなれません。


娼婦たちは、精霊にでもならなければ、この洞窟の尖塔も、鉄の隙間も通れない。だから私は活動的なことより、思索的なことに喜びを感じ、この哲学的な思索の深さを通して私をメナルカ、メナンデル、メネラウス、メナリプスと一緒にしなければならないのです。

(当時は手淫が「メナルシ」と呼ばれてたと知れば、これらの学識豊かなギリシャ人たちの羅列の真意がわかろう)

私は詩人だ。
さあ、ソネットを一編作ってあげよう。
真のソネット、そは銭が音なり。


(金がないと、囚人は看守から最低限の生活用品すら手に入らなかった。「1ペニーで地獄に落ちる時代」と正反対)


(中略)私が宿泊しているのは、取り壊されて解体された部屋で、風車の最初の怒りにさらされています(神の思し召し)。ですが北風に吹かれても、自分の体が平らになってしまうことがなければ、圧迫感を感じることはありません。エデンの園のアダムのように。壁一面には、石炭や木炭やグロテスクな物でできた、なんて美しいタペストリー!それと鳥やベル付きのシューター。

(悪名高きトリノの独房は暗くて、カビ臭く不健康で、煤と落書きで黒ずんでいる)


惨劇により、トイレのないこの部屋にいることになった。[…]真に艱難辛苦:穴がないためピニャータの中に畏敬の念を持たず小便し、吐く息はアラブの匂いが鼻に届かないよう、タイルで覆っている。


飢餓と、歯の凍結。
聖母をしかと抱きしめるため
食料を集める事はできなかった。
急いで書きたい事が山ほどあるのに
インクは硬く乾いて白い。
濡れた紙に、進まないペン。
痛風の苦しみ、脇腹の痛さ
全ての上に虚無がのしかかっているようだ。
不眠に疲労。

ジョアン・マリアという者の物語を語ろう。彼はユダヤ人として生まれ、ラバ飼いで、僧侶でもあった。主人であり、仲介者であり、スパイだった。もっと褒められる技芸に身をゆだねるため警官になり、最後は処刑人になった。呪われた魂を逃がすために。
(遣り手の囚人の描写)


ついに神の思召しで彼は来る。
そして、暗い空洞の洞穴を震わせる。
3つの喉を持つケルベロスのように吠え。
…
よこしまな時間に叩く者は、何という悪魔だろう。
躾けられてない者、泥棒の相乗り。
君達のために1時間も眠れない


(看守を呼ぶのに大声を出さないといけないという話)


嗄れ、垂れ、痩せこけ、乾いてる。
髭や髪も手入れされてない。
山羊だったら、毛むくじゃらだ。


(ヤギbeccoは侮辱語でもある。詩人は自分をグロテスクな乞食として描くことを厭わなかった。ベッドを背負い、手淫に耽り、何よりも深い悩みを抱えている)


星に向かって拳を握り、教会と鐘楼を否定せよ

(所長の腹立たしい発言)


敵に迫害され、友人に裏切られ、主人に落胆され、何の役に立てるのか ?私は称賛に値するか ?卑しい人間に偉大さを期待できるか ?悔い改めたウィットのある人と、死にかけた精神のある人とでは?苦味しか感じない人が、甘い文体を持てるか ?牢獄の闇の中に身を置く者から、詩的な光の明快さを得られるとでも ?


怠けてたら、覚えてる人はいなくなる。
どんな手段を使っても、面倒と思われる。
祈っても聞いてもらえない。
書いたことは、黙示録に記される。


(囚人のジレンマ:書かなければすぐ外部から忘れ去られるが、仲介者から助けを求めれば、その活動が仇となる)

(Via https://journals.openedition.org/ccrh/3363?lang=en )


【蛇足】マリーノはカトリック教会に対する不遜のため、パトロンと共に三度投獄された。ナポリとトリノで厳しい拘禁を経験したマリーノは、文彩で刑務所を脱出した。手紙の言葉遊びや駄洒落、学術的な言及、わいせつな曖昧さは、フランス式に「ビュルレスク」と呼ぶに相応しく、貴族や枢機卿を動かした。
詩人のビュルレスクは聖書の偉人たちをも嗤う。取巻く状況は非常に厳しいものだった。自分よりもはるかに良い条件で、しかも短時間だった箱舟のノア、兄弟に貯水池に捨てられたヨセフ、ライオンの巣にいたダニエル、鯨の腹の中のヨナ…何よりも、受肉した神ご自身が埋葬されたではないか。「しかし、その聖性に一石を投じることはなかったろう」と締めくくる。

バロック雑誌

「KOS」(FMR社*1、1984年~1990年?)。KOSとは、ヒポクラテスが生まれたエーゲ海の島の名であり、KOSMOSの略でもある。「医学、自然、人間科学の文化と歴史の月刊誌」と銘打ったこの雑誌は、人文学でもあり、科学でもあるがゆえに、どちらにも居場所なく脚光を浴びてこなかったものばかり採りあげた、LIFE みたいなビジュアル誌。頁を開けば、バロック時代の土木機械、G.A.ブランビラによる息を呑む手術器具、彩色図版で描かれた16世紀の「フランス病(梅毒)」、スペーコラ美術館、ジャケドローの自動人形、フランチェスコⅠ 世の小書斎、アダム・エルスハイマーにデューラーの「メランコリア」、17 世紀の美容整形術(痛そう)、コンピュータによる高分子タンパク質モデル、もちろん解剖図、かと思うと毛沢東… 発行人フランコ・マリア・リッチ(故人)はイタリアの貴族で、美しい出版物を出し続けるために、美術品を売ったり、城を売ったりして(!) 資金に充てた。ジャポニズムなど目もくれない選択眼。

*1:発行人Franco Maria Ricci のイニシャルであり、かつフランス語読みでエフェメール《一時的な筆記物、蜻蛉》

チーロ・ディ・ペルス②

(拙訳)

歯車の小さな機関は
1日を分解し、数切れの時間に分け
暗い文字盤を外側に刻み込んだ
誰でも読む者は知る: その闇を

凹面の金属がカチカチ鳴りながら、
致命的な声は我が心に響き渡る。
その不運を正確に説明できない
青銅のテナーよりも正確には。

私が休息と平穏を決して望まぬように、
ティンパニーとトランペットの響きで
私に絶えず、貪欲な時と対峙させる。

そして、打撃音を響かせる金属達は、
つかの間の人生の進路をさらに速め
誰もが墓石を何度も叩き、中に入りたがる。

(Via http://baroccoecirodipers.blogspot.com/2012/10/ciro-di-pers-ciro-di-pers-nasce-nel.html )


【蛇足】ペルスは貴族で、騎士団に志願した。詩はマリーノの影響が大きい。

ボルヘス

そのとき、啓示があった。楽園のアダムも見たはずだが、マリーノは薔薇に眼をとめ、それは己れの永遠のなかに生きており、彼のことばのなかには存在しないこと、薔薇を記述したり暗示したりすることは可能でも、それを表現することはできないこと、広間の隅に黄金の影を落としている誇らかな書物の山は、彼自身が夢みたような、世界の鏡ではなく、その世界に添えられた、さらに一つの物でしかないことを悟ったのだ。
この啓示をマリーノが受けたのは死の直前である。おそらく、ホメーロスやダンテもそれを授かったにちがいない。

(「黄色い薔薇」鼓直訳より)

ジャン=バティスト・シャシニェ⑭

(拙訳)


どうすればいいのでしょうか、主よ、あなたの優しい存在である
私が、最高級の餌として扱われ
貪欲に消費され、喰い尽され、腐っていくとしたら。
敵の墓場の静かな心の下で ?
私はここで、自分自身を解剖学的に紹介しましょう
拍子を打たない心臓、肉のない口。 髪の毛のない頭、骨のない肉体。
くぼんだ眼、冷えきって、ブルズミックな顔。


人間の見るもの、それは人間か、いや人間ではない。
それは、もろい貝殻にすぎず
腐らない、不滅で、繊細な魂が、
彼女がそこに住む短い間の存在に過ぎない。


人間の朧な肉体、これはトウモロコシから作られているのではないか
材料由来の壊れやすさは、致命的
腐敗しやすく、すぐ埃になる
必殺の一撃が通過すると、すぐお陀仏。
あなたが悪い心を持っているように
死神が 1 時間考えなかったというだけの事
ビールの下で誰が腐らねばならぬのか
この不完全な性質の肉の重荷に ?


[...]
腐敗は私の弟だ。 死は私の妹と呼ばれている。
土くれと蟲が、父と母である。


屠殺された人間がこの十字架にかかった。
不潔で、血まみれで、あざだらけ、形もおかしい。
というより、形がほとんどわからないものだった。
[...]
彼の血まみれの皮膚は骨に縫い付けられていた。
そして、腹は背中の椎骨に縛られていた
内臓が無いかに見える無惨な背骨、
刺された槍は脳にまで達していた

(Kjerstin Aukrust著, Violences du corpsより)

ピエール・ド・マルブフ⑩

(拙訳)

アイリス

太陽の光が、向い合う雲のうねりを照らし、
その雲は、大気でバラ色になり、
すぐ私たちに金庫室の虹彩を見せ、
室内の輝きで私たちの地平線を描く。

ああ、もうここに、その天空が存在している
空を彩り、様々な輪が生まれ
太陽に向かって、その誕生のエナメルを見せる。
それらが形づくられ、太陽に光線を投げかけている。

ベルトを半周ねじるだけ。
私たちの眼から半円を盗む。
様々な絵の具で自分の色を混ぜる。
紺碧、紫、金色で空を彩る。

そんな、貞淑な鳩の黄金の首。
太陽に向かって色を変化させる。
でも、やっぱり菖蒲の色の方がきれいだ、
私たちの眼を楽しませる鳩の様なエナメルよりも。

このメッセンジャーから、身を隠しましょう。
水の女王が来てそう告げる
時には、彼女の円形の弓の水分が
涙となって水を与えに来るだろう。

裸の太陽はその顔を反映する
この美しい虹を使って、曲がりくねった形を作る。
イエスは太陽、世界は雲。
恩寵は光線、聖母はアイリス。

(Via https://www.bonjourpoesie.fr/lesgrandsclassiques/Poemes/pierre_de_marbeuf/liris )


【蛇足】Iris (虹、虹彩、菖蒲、回転・捻じれ)の複数の意味を映発させ「海と愛と(フィリスへ)」の2 匹目の泥鰌を… かもしれない。

クロード・オピル⑪

(拙訳)

「天使はクリスタルガラスの屋根」
おお、おお、歌を描く事、でも流行歌とは違う
お勉強したロンサールのそれとは違う
私の愛に満ちた思いは沈黙を支持します
あなたの名誉のために、私は私の詩を歌います
雄弁ではなく、愛に満ちた私の詩
怒りに満ち、空虚な話を歌う人々
インクの涙で惨めに泣いて
彼らは泣くが、それはフィクションの涙だ
しかし、私の魂(主)は真の恋人であり、彼女は心から泣く
愛情に満ちている
あなたの存在、美しさが、彼らには致命的に欠けている
(Via http://www.persee.fr/web/revues/home/prescript/article/rhren_1771-1347_2007_num_65_1_3005 )


【蛇足】初期のオピルは、詩人が最大の栄光を得るのは、聖なるミューズに身を委ねることによってだと、詩人を神性の「器官」であるとした。

(よい子は見ちゃダメ) ジャン・ド・ラセペドのパロディ詩

thry.hatenablog.com ☝️この作品のパロディを書いてる方を~…のでー、拙訳


彼はすべてを満足させた: 彼はすべてに値する、

この乾木の上で、歓喜は真実に到達する :
そこには正義と平和が睦み合う。
酔っぱらったグラスの中のサタンは、私たちの魂の歓喜を飲みこんだ。
イエスは魔法でグラスを再び満たした: 地獄の美しいグラスは吐瀉物に変わった: しかしそれはブランデー、地獄の効果だ !

サタンは自らの暴力がアルコールによって満たされると思っていた。しかし、イエスは「友よ、お互いを愛せ」とも言った! 素晴らしいガラスは、命の美しさに値しないが、歓びのおせっくす (何という不思議!) は、すべての人に命をもたらした :

その日、良いおせっくすが、すべての変態性に勝利した。しばしば敬虔なタルチュフ *1 、彼の想像上の神は、非常に隠された方法ですでに己をお見透しだ。

精神は穏やかになった。なぜならば、真実、
この歓びのおせっくすこそ、人の神性のありか

そして、聖体拝領と狂気が口づけをかわすところ。


【蛇足】魂の手洗いをしても、きよくはならない。
(これはパロディではなく本物からの引用)

*1:モリエール劇の登場人物で、聖人君子の仮面を被った偽善者

ジャン・ド・ラセペド⑭

(拙訳)

悲劇の王族よ ! 悪名高い服よ !
痛烈な髪飾りよ ! 厳かな杖よ !
美しく親愛なる頭よ、私の魂の愛よ。
私の唯一の忠実で完璧な恋人キリストよ。

聖なる指導者よ、彼らはあなたを打ち、その痛ましい痛撃は
百聞は一見にしかず、だ。
処刑人よ、鋭利な刃物で彼を傷つけよ。
そして、この高級な豊饒さを注いでくれ。

一人のために一万の死を覚悟しなければならないのか。
彼の頭から溢れる血を見よ。
その眼はぐしゃぐしゃで、その光は憂鬱だ。

純粋な血、ネクターは冒涜され、混ぜられている。
不潔な唾液で、その血まみれの泥で
この美しい顔を、歪んで変形させてしまう。


(Via https://www.crisismagazine.com/2012/a-poet-of-the-passion-of-christ )

ジャン=バティスト・シャシニェ⑬ + ゲバラ

(拙訳)

幼少期は不毛の花に過ぎない。
青春とは、虚栄心の塊のようなものだ。
壮年期は、退屈と徒労。
老いは、悲しみ、悔俊、痛み。

私たちのゲームは不愉快で、喜びは悲惨だ。
財宝の様に映る、苦悩と悩みを抱えている。
湖、牢獄、鎖の様な私たちの自由。
安らぎは違和感、笑いは涙をはらむ。

ある時代から別の時代に移るという事は、交換だ。
小さな悪からより大きな悪への。
その結果、誰もいない場所に追いやられる。

人生は、さ迷う海のよう
流れが流れを追い、波が波を押しやり、
死の天国の終わりに立ち上がる。



【蛇足】カトリーヌ・グリースは、シャシニェの代表作「生の軽蔑と死の慰め」に影響を与えたフランス語版「王侯の日時計」の44の抜粋リストを発表している。
f:id:thry7676:20210325185754j:plain

シャシニェとゲバラに通底するのは、生の儚さへの関心であり「生の軽蔑」でより技巧的に洗練され、深まった趣がある(グロさの面でも)。
アントニオ・デ・ゲバラ「王侯の日時計」は👇
http://www.filosofia.org/cla/gue/guerp.htm

ジャン・ド・スポンドへのオマージュ詩

ジャン・ド・スポンドに与へる死の歌

鷲巢繁男

Mes yeux,ne lancez plus vostre pointe esblouye
Sur les brillans rayons de la flammeuse vie.

(わがまなこよ、汝(な)が羞明の目差を、
燃ゆる生の輝く日の光に投げること勿れ。)

われら生きとし生ける者に
死は最も魅力あるまぼろしだ。
見よ、泯びゆく花びらのくれなゐ褪せて、
白白と無言のままに生き絶えるのを──。
路傍に横たはる卑しきけものの かそか開いた死の歯並は、
もはやいかなるものとも無縁な牙だ。
ああ、いかなる鋭い牙も死を噛み砕くことはできない。
そして詩人ジャン・ド・スポンドよ、
御身のまなこも、燃ゆる生の光を拒否してより、
再び見開くこともなく、ただ夥しいその死の歌が、
もはや誰も覗くことを得ぬ御身の死の上で、
たからかに喇叭を吹いてゐる。
《閉ヂヨ汝、闇モテ包メ、ワガマナコヨ》と。
かくも燭台を列ねた赫い焰の照り返しを、
死者よ、御身のまはりに飾るのは、
億年の闇を象嵌した死のまなこを
光の泉で潔めんためか、影なる者よ、
御身の行く手を導くためなのか。
《アア、汝ノ日日ヲ語レ、日日ハ過ギ行キ、
ソハ汝ニトリテ既ニ死シタルモノナリ》
その肉体(ニク)の中に閉ぢこめた死を、詩人よ、
御身は日毎に養つたが、
御身の柩は、その生と等しく夥しい死の歌に飾られ、
賑賑しい生の終末からも逃がれ、
もはや何人も知ることなき秘密の間道を経て、
死のただ一つの確かな錘にしつかりと縋りつつ
底しれぬ虚無を降りていつたのだ。

そしてスポンドよ、われらは御身の死の国よりのリポートを聞くを得ず、
御身の死のまぼろしのみが歌ふそのひそかなこだまを聞くのみだ。
《ワガ魂ヨ 起キヨカシ、今シ 汝ノ死ノ床ヨリ》と。

(「歴程」 188 号より)


【蛇足】

ハウザーやホッケが《マニエリスム》と総称するところのこの時代の文学は、イギリスに限らず (略) フランスのスポンド (略) などを含めて、まことに広義の《ノンセンス文学》の驚嘆すべき花盛りであった。

この様にスポンドはマニエリスム詩人でもある。マニエリスム研究華やかりし 1970 年代ごろの和書中心に、名前や詩が割とよく載っている。

ジャン・ド・ラセペド⑬

(拙訳)

この人を見よ、私の眼、何と嘆かわしい光景だ !
羞恥心と不眠にまみれ、食物は足りていない。
悲しみと、あまりにも大量の失血で
醜い姿になってしまい、もはや好ましさは欠片もない。

その髪 (尊い頭の飾り) は
この戴冠式で血に染まり逆立ってしまった。
葦に絡まり、無価値なものとして
その傷ついた頭に不名誉な柵を築いている。

その瞳 (かつてとても美しかった) は打ちのめされ、退いている。
窪んだ眼は、悲しいかな、2つの蝕まれた太陽だ。
口の中の珊瑚は、今や淡く黄ばんでいる。

かの肌のバラとユリは色あせた。
他の箇所はオパール色となり、
頭から爪先まで傷だらけだ。

(Via https://catholicexchange.com/the-poet-of-the-passion-of-christ )