diary

バロック詩の情報。

ラセペド⑦場所の構成

「定理」は、数学ぽい書名と裏腹に、象徴的イメージの輝きが目を惹く。
たとえば「白長調の交響曲」と呼ばれるソネットがある。

白いのは、年齢なき偉大なる父の衣、
白いのは、その白き館に仕える廷臣たち、
白いのは、その霊のきらめく羽衣、
白いのは、その小羊の輝かしい羊毛。


「赤のソネット」の結びは次のようである。

おおキリストよ、おお聖なる小羊よ、どうか隠してください、
私のあらゆる赤き罪を──深淵の小枝のようなそれらを──
あなたの肉の衣の、血に濡れたひだの中に。


さらに最も印象的なのは「夜のソネット」である。

凍てつく極地の永遠の夜も、
キンメリア人の夜の濃い闇も、
ファラオの夜の、手で触れるほどの恐怖も、
おおユダヤ人、お前達の夜には及び得ない。
(略)
おお深き夜、黒き夜、諸夜の王よ。

👆これはユダヤ人とユダの裏切りによって世界が陥った形而上学的な夜であり、中世の天文学者サクロボスコのものした『De spherae mundi』を下敷きにしている。(ラセペドは反ユダヤの立場であった)


「永遠の夜」とは、そこでは空気が極めて濃密で曇っており、太陽の光線が極めて弱いため、光線が消費しうる量よりもはるかに多くの水蒸気を発生させるからである。こうして空気を晴れさせることはできないため、そこには昼など存在しないと言ってもよい。(サクロボスコ『球体論』第3章)


【蛇足】「場所の構成 (場面を心に具体的に組み立てる黙想法)」 composition de lieu とは…聖書 の出来事を、ただ意味として考えるのではなく、具体的な場所・光景・音・身体感覚を伴う場面として心の中に組み立て、その場に自分を置くように黙想する技法の事。(おなじ瞑想でも、14世紀英国の「不可知の雲」とは方向性がだいぶ違う)
ジャン=クロード・カリエールは、イグナチオ・デ・ロヨラ「霊操」における「場所の構成」を、西洋において唯一、東洋の仏教や中国の黙想・呼吸法の技法と比べうる瞑想法として紹介しており、ラセペドは「場所の構成」の善き使い手であると語った。